ロウバイ(蝋梅)の学名は、
Chimonanthus praecox ですが、
冬(cheimon)の花(anthos)の、
早い(prae)開花(cox)ですから、わかりやすい。
学名のほとんどは、
ギリシャ語を、
ラテン語の文法に従い、変形させたものです。
ラテン語化は、命名規約の形式から、事務的ですが、
元ネタのギリシャ語は、命名者の好き勝手です。
人名に由来する学名は、
それを記念した事情が、わかりませんので、
植物の特徴と、人名の語源が、
混沌として、識別不能です。
私は、死にかけの老人ですので、
今さら、種小名までは覚えられず、
若い頃に覚えた属名も、ほとんど忘れましたが、
属のレベルは、人間の中でも、
瞬時に事実を識別する人の、生活実態に、
ほぼ一致した水準です。
近代以後の西欧の、
事実と論理法則を標榜するロマン主義の典型が、
18世紀末~19世紀前半の、
文学者のゲーテの、花の構造と形態の分類に、
よく現れています。
この傾向は、現代の遺伝子による分類だけでなく、
コンピュータのハードウェアの設計や、
ソフトウェアのプログラムにも、受け継がれていて、
要するに、
「知覚の主体の精神が、知覚の対象の事実を、
目や手などを使い、論理法則により知覚する」
というロマンティックな物語を、共有しています。
科学技術は、その代表ですが、
何と何と何が、論理法則と言われる定義であると、
みんなで決めなくても、技術者が勝手に決めて、
その技術が、みんなに普及すれば、
その定義が、論理法則の一角に食い込みますから、
コンピュータのプログラムと同じです。
鉄砲や黒船や原爆やパソコンのように、
普及した技術を、科学が、論理的に解説するのは、
底抜けですから、APG2分類体系のように、
ロマンティックな生物の分類を、
遺伝子により改訂しても、文学の域を出ません。
ロマン主義は、
古代の論理法則を、近世に復興したことにより、
盛んになったように、
現代の私たちの生活の実態は、
古代の神話に、酷似しています。
ギリシャ語に由来する学名を知ると、
事実や論理法則と言われる情報の分類の仕方が、
神話であろうが、現代人の実生活であろうが、
科学技術であろうが、
非常にロマンティックであると、わかります。
老人の私には、夢のような人生が、思い返されます。
prae(早い)cox(開花)の、
coxは、cookの語源ですが、
生ものが調理されて、食べられるようになるとか、
成熟して、あとは死ぬしかないような、
情けない意味です。
鎮痛剤に使われるcox(コックス)は、
cyclooxygenase(シクロオキシゲナーゼ)
という酵素の略語ですが、
こいつの作用を抑制すると、
炎症や痛みが緩和されます。
ゲーテと同じ時代の、
クレペリン(Emil Kraepelin)の、
Dementia praecox
(デメンチァ プレコックス、早発性痴呆)も、
第一感として閃きます。
特定の精神状態を、精神の病気として、
権力が、個人を、強制的に隔離監禁するための、
Praecox-Gefuhl(プレコックス感)と言われる彼の
神秘的な直感が、
現代の統合失調症の病気の概念を作りました。
狭い意味での精神病の元になりましたが、
ロマン主義もいいところで、
器質的な根拠は、ありません。
ロウバイは、内花被片が赤く、
その品種のソシンロウバイと、
一目瞭然に識別されますが、
属の違うナツロウバイや、アロリカロウバイも、
咲く時期や、花の色などから、すぐにわかます。
ナツロウバイは、
GABAのアンタゴニストとして作用するそうで、
食べたくありません。
アメリカロウバイは、
クロバナロウバイとも言われて、
クロユリと同じ色の花です。
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