ベルディ(Giuseppe Verdi)のオペラ
椿姫(La Traviata )の、
第1幕乾杯の歌→思い出の日からの二重唱にかけて
ソプラノ : アンナ・モッフォ(Anna Moffo)
テノール : ニコライ・ゲッダ(Nicolai Gedda)
*** ***
後ろのほうの、アルフレードのアリアは、
繰返しが多く、省略されていますが、
なんとか、わかりますので、
貼り付けて置きます。
アンナ・モッフォは、往年の美人ソプラノで、
ニコライ・ゲッダは、
スキーパやステファノなどと並び、
若い頃に、私の、よく聞いたテノールです。
ALFREDO 【アルフレード 乾杯の歌】
Libiamo, libiamo ne'lieti calici,
酌み交わそう、喜びの酒杯を
che la bellezza infiora;
美しい花と共に。
e la fuggevol,
そしてつかの間の時間、
fuggevol ora s'inebrii a volutta.
喜悦で酔いしれる。
Libiam ne' dolci fremiti
飲もうじゃないか、甘いときめきが
che suscita l'amore,
恋を鼓舞するのだ。
poiche quell' occhio al core
抗いがたい眼差しが
onnipotente va
私の心を誘うがゆえに。
Libiamo, amore, amor frai calici
酌み交わそう、愛の杯を
piu caldi baciavra.
口づけは熱く燃えるのだ。
Coro 合唱
Ah! libiam, amor fra' calici
酌み交わそう、愛の杯を
piu caldi baci avra.
口づけは熱く燃えるのだ。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Tra voi, tra voi sapro dividere
皆様と一緒なら、楽しい時を
il tempo mio giocondo;
分かち合うことが出来ます。
tutto e follia, follia nel mondo
この世は愚かなことで溢れてる、
cio che non e piacer.
楽しみの他は。
Godiam, fugace e rapido
楽しみましょう、儚く去るのです、
e il gaudio dell' amore;
愛の喜びとて。
e un fior che nasce e muore,
咲いては散る花のように、
ne piu si puo goder
二度とは望めないのです。
Godiam, c'invita, c'invita un fervido
楽しみましょう、焼け付くような
accento lusinghier.
言葉が誘うままに。
Coro
Ah! godiamo, la tazza, la tazza e il cantico
楽しもう、酒杯と歌は
le nonti abbella e il riso,
夜と笑いを美しくするのだ。
in questo, in questo paradiso
この楽園の中で
ne scopra il nuovodi.
新たな日が、私たちを見出すように。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
La vita e nel tripudio.
人生は楽しみと共にあるのです。
ALFREDO 【アルフレード】
Quando non s'ami ancora.
愛を知らない間は。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Nol dite a chi l'ignora.
愛を知らぬ者に、そんな事を言わないでください。
ALFREDO 【アルフレード】
E il mio destin cosi
私の運命はそうなのです。
Coro 合唱 ヴィオレッタやアルフレードも含めて
【特に、アルフレード役の、ニコライゲッダの声が響く】
Ah! godiamo, la tazza, la tazza e il cantico
楽しもう、酒杯と歌は
le nonti abbella e il riso,
夜と笑いを美しくするのだ。
in questo, in questo paradiso
この楽園の中で
ne scopra il nuovodi.
新たな日が、私たちを見出すように。
ah! ah! ne scopra il di,
あー あー 過ぎてゆく
ah! ah! ne scopra il di,
あー あー 過ぎてゆく
ah! si!
あー あー
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Non gradireste ora le danze?
ダンスなど いかがですか?
ALFREDO 【アルフレード】
Oh, il gentil pensier! tutti accettiamo.
素晴らしい考えだ!皆お受けします。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Usciamo dunque
では参りましょう。
(2人は踊り始めるが、ヴィオレッタが青ざめて)
Ohime!
おお
ALFREDO 【アルフレード】
Che avete?
どうされましたか?
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Nulla,
何も、
Nulla.
何でもないのです。
ALFREDO 【アルフレード】
Che mai v'arresta
どうして、やめるの
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Usciamo
よその部屋へ移りましょう
(ヴィオレッタは階段を上り・・・)
Oh Dio!
おお
???
(??? 聞き取れず)
(鏡を見ながら)
Voi qui!
いらしたのですか!
ALFREDO 【アルフレード】
Cessata e l'ansia
気分は良くなりましたか?
Che vi turbo?
貴女の苦しみは。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Sto meglio.
だいぶ楽になりました
ALFREDO 【アルフレード】
Ah, in cotal guisa
このようなことをされていては
V'ucciderete aver v'e d'uopo cura
命が危ない、
Dell'esser vostro
お体を大切になさるべきです。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
E lo potrei?
私に出来るでしょうか?
ALFREDO 【アルフレード】
Se mia
ああ! 貴女が私のものならば、
Foste, custode io veglierei pe' vostri
貴女の優美な日々を、
Soavi di.
私がお守り差し上げるのに。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Che dite? ha forse alcuno
何を言われるのですか?
Cura di me?
誰も私の心配をしてくれないとでも?
ALFREDO 【アルフレード】
Perche nessuno al mondo
この世に貴女を
V'ama
愛する人はいません。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Nessun?
誰も?
ALFREDO 【アルフレード】
Tranne sol io.
私の他はね。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Gli e vero!
そうでしたわね!このような大きな
Si grande amor dimenticato avea
愛の存在を、忘れていたようです。
( ridendo 笑う)
ALFREDO 【アルフレード】
Ridete? e in voi v'ha un core?
笑うのですか? 貴女に心はあるのですか?
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Un cor? Si forse e a che lo richiedete?
心ですか?おそらく。どうしてそのような事を?
ALFREDO 【アルフレード】
Oh, se cio fosse, non potreste allora
ああ、もしそうならば
Celiar.
からかったり出来ないはず。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Dite davvero?
本気で言っているの?
ALFREDO【アルフレード】
Io non v'inganno.
私の言葉に偽りはありません。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
Da molto e che mi amate?
以前から私のことを、愛しておられたのですか?
ALFREDO 【アルフレードのアリア 思い出の日から】
(繰返しを省略しています、最後の部分)
Ah si, da un anno.
ええ 一年前からです。
Un di, felice, eterea,
ある日、幸せに満ちたように、
Mi balenaste innante,
私の前に稲光のごとく現れたのです。
E da quel di tremante
あの日以来私は震えながら、
Vissi d'ignoto amor.
未知の愛に生きてきたのです。
Di quell'amor ch'e palpito
その愛はときめき、
Dell'universo intero,
全宇宙の鼓動、
Misterioso, altero,
神秘的にして気高く、
Croce e delizia al cor.
心に苦しみと喜びをもたらす。
VIOLETTA 【ヴィオレッタ】
(アルフレードとの二重唱になる)
Ah, se cio e ver, fuggitemi
それならば私を避けてください。
Solo amistade io v'offro:
貴方には友情のみを差し上げます。
Amar non so, ne soffro
私は愛を知りませんし、そのような
Un cosi eroico amor.
尊い愛を受けることは出来ません。
Io sono franca, ingenua;
正直に申し上げます。
Altra cercar dovete;
他の人をお探しください。
Non arduo troverete
そうすれば、私を忘れることは
Dimenticarmi allor.
難しくはないでしょう。
ヴィオレッタは、いわゆる高級娼婦ですが、
日本流にいうと、お妾さん稼業でしょうか。
今は絶滅したと、思います。
昔の位の高い武士や公家は、
本妻や正妻のほかに、
側室を娶(めと)るのが、普通でしたから、
町人や百姓も、お金があれば、
当然に、お妾さんや2号さんを、設けました。
設けると言うのが、変な言い方ですが、
本妻と同居すると、喧嘩になりますので、
別居します。
そのために、
本宅とは別に、家を持つ必要があり、
設ける、という表現になります。
家が、社会の最小単位の、家族や個人の
拠り所でしたから、
家がなくなれば、露頭に迷います。
その家が、家父長制でしたから、
跡継ぎの男子を産まなければ、断絶します。
そのために、
側室や妾(そばめ・めかけ)が必要でした。
男女の体の機能が違いますから、
男女同権でないほうが、現実的であり、
家の責任者が、
男子でなければいけないとする家父長制が、
男女平等を可能であるとする理想主義よりも、
弊害が大きいとは、限りません。
男1人だけの家があり得るのに、
女1人だけは、認められませんから、
家を維持するために大変ですが、
家と家族を維持するための、
どちらが、事務的に困難であるかと、
比較するのも、容易でありません。
家という事務的な社会を維持するために、
昔は、妾が必要でした。
女は戦争に行きませんから、
家長になれなかったのは、
軍事政権の江戸時代の、
当然の社会制度です。
軍事政権は、
軍隊を支えるための、組織や制度が、
一般社会に要求されます。
戦力にならない女は、
社会の単位になりません。
明治になり、武士が居なくなっても、
急に、側室やお妾さんを、
離縁するわけに行きません。
どうせ、
妻のほかに、恋人がいるかどうかは、
人の勝手ですから、
法律の関知するところでありませんが。
一応、重婚罪というのが、あります。
事務的な婚姻について、
重婚が処罰されますが、
事実上の婚姻は、対象外です。
日本国民は、第二次世界大戦前まで、
事実上、一夫多妻でしたから、
お妾さんや2号さんになることを、
本職とする女性が居ました。
たぶん、欧米の高級娼婦と同じであったと、
思います。
第二次世界大戦後に、だんだんと居なくなり、
高度経済成長後は、ほぼ、絶滅しました。
江戸時代の文化が、本人の死亡により、
完全に無くなりましたが、
女性が、働きに出るようになったことや、
物質的に裕福になったことや、
核家族化などが、関係しているかも知れません。
欧米でも、なくなったと思います。
高級娼婦のヴィオレッタの立場を、
現代人は、理解できないかも知れません。
ところが、アルフレードという青年も、
理解できなかったようで、
お金持ちのお坊ちゃんは、極楽蜻蛉でした。
ヴィオレッタは、何も知らないお坊ちゃんを、
相手にしなかったのですが、
あまりにも純な気持ちなので、
つい、手を出してしまいます。
この後、2人は一緒に暮らしますが、
ヴィオレッタのほうが、
経済的に支えていましたから、
アルフレードは、紐です。
それも、知らない。
アルフレードの父親が、
息子と別れてくれと、頼みに来ます。
兄が娼婦と暮らしているので、
妹が結婚できないと、文句を言います。
息子を誑(たぶら)かさないでくれ。
そんなわけで、ヴィオレッタは別れて、
高級娼婦に戻りますが、
アルフレードは、裏切られたと思い、
ストーカ行為に及びます。
彼女は逃げて、1人で暮らしますが、
アルフレードは、追いかけます。
見かねた父親が、事情を打ち明けて、
アルフレードの誤解は解けましたが、
時遅く、ヴィオレッタは結核で死にます。
めでたしめでたし、という物語です。
La Traviata は、
道を踏み外した女 という意味ですが、
原作の、デュマ・フィスの小説の題名が、
La Dame aux camelias ですので、
日本では、椿姫と、訳されます。
原作者のおじいさんのトマ・デュマは、
侯爵と黒人奴隷の子でしたから、
大変だったと思いますが、
昔ですから、小説や演劇などに関わる人間は、
まともな人間と、見られていませんでした。
ヴェルディもそうですが、遊び人です。
芸術家は、そうでなければ、大成しません。
オペラや音楽に、うつつを抜かしている人間に、
ろくなのは、いません。
哲学もそう。
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