横須賀美術館 639 機械仕掛けの神

いちおう、紅葉を入れて。
 
 
お医者さんって、
機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ ,Deus ex machina)かも
知れません。
 
紀元前5世紀の、古代ギリシャのエウリピデスという劇作家は、
神様を演じる役者を、機械仕掛けの宙乗(ちゅうの)りによって、
空から降りてくるように、登場させました。
 
宙乗りって、歌舞伎でも、
18世紀の初めに、市川団十郎が宙乗りで登場して以来、
神憑(かみがか)りや、亡霊などの役柄に、よく使われる演出です。
 
古代ギリシャでは、紀元前5世紀から、ありました。
 
人間の物語が複雑になり、収拾がつかなくなると、
神様が降りて来て、超能力を発動します。
漫画家が、話の展開に窮すると、
性転換を持ち出して、目先を変えるのと、よく似ています。
  
神様は、昔ながらの神話を背負っていますので、
新作の人間の物語と、伝統的な神話とが、二重写しになり、
ワグナーの楽劇のように、奥行のある作品に見えることがあり、
お客さんは堪能します。
 
幽玄が売り物の、新古今和歌集の、本歌取りみたいなものかしら。
平安時代の古今和歌集の歌に託(かこつ)けるように、
鎌倉時代の歌人が、新しい歌を作りました。
そうすると、昔の歌のストーリーや余韻が、
現在の新作の意味に重なりますので、立体感が出てきます。
 
中国の古典文学なんか、
すべての句が、昔の文学作品の意味に、重なっています。
欧米でも、エラスムスの痴愚神礼讃なんか、
古代ギリシャやローマの、古典の知識の、ひけらかしが多いので、
読むのに往生します。
日本語に翻訳した人が、注釈ばっかり、付けているの。
注釈のほうが、本文よりも、量が多く…
 
古代ギリシャの悲劇に、神様が出て来るのは、
ここで、この神様に纏(まつ)わる神話を思い出しなさい、
という意味です。
そのような神話を知らなければ、話の筋書きが軽薄に見えます。
 
神様の登場によって、話の展開に決着をつけてしまうのが、
機械仕掛けの神様であるだけでなく、
そもそも、神様そのものが、機械仕掛けのように、
単純で幼稚な、妄想の産物でないかと、言う人もいます。
 
水戸黄門の勧善懲悪や、
フーテンの寅(とら)さんの、下町の人情のように、
エウリピデスの機械仕掛けの神は、
アリストテレスによって、
不自然な筋書きとして、批判されました。
 
楽な生活を手に入れるために、故郷を捨てて、
遙々(はるばる)と、
ペルシャやインドまで、行軍した古代ギリシャ人って、
神話のような非現実的なものを、信じるわけがないとも、
言えますけれど、
神さまに憑(つ)かれていたとも、言えます。
 
女子高生のパンチラを求めて、盗撮を繰り返す男の子たちに、
似ているかしら。
 
     ギリシャ人は、船に乗って、地中海や黒海の沿岸に、
     たくさんの港町を作りました。
     船乗りさんって、すぐに外国語を覚えます。
     遠くまで荷物を運んで、利ざやを稼ぐお仕事ですから、
     外国語を知らなければ、商売になりません。
     港に入ると、地元の女の子と、必ず仲良くなるしね。
 
     フェニキア人も、たくさんの港町を作りました。
     フェニキア文字が、
     ギリシャを含めて、地中海沿岸に広く伝わったように、
     フェニキア人のほうが、ギリシャ人よりも、早くから、
     港町を作ったのかも知れません。
 
     フェニキア人は、セム系の人種でしたので、
     地中海の南半分の沿岸に、たくさんの港を作りました。
     そこに、セム系の人たちが、
     たくさん暮らしていたからです。
 
     ギリシャ人は、地中海の北半分から、黒海沿岸に、
     たくさんの港町を作りました。
     そこに、白人がたくさん住んでいたので、
     商売になりました。
 
     エジプトの絵文字から、
     セム系の人たちが、表音文字を作りました。
     古代のエジプト人って、セム系の人だったのかしら。
 
     フェニキア文字は、
     セム系の人たちの表音文字の一種です。
     フェニキア人は、地中海の北半分も含めて、
     地中海沿岸に、広くフェニキア文字を広めました。
 
     ペルシャが、陸からフェニキアを占領したので、
     ペルシャ人は、フェニキア人の船に乗って、
     ギリシャを攻撃しました。
     ペルシャ戦争です。
 
     ペルシャって、山ばっかりの土地ですけれど、
     ギリシャ人と同じように、白人でした。
 
     チグリス・ユーフラテス川を利用した灌漑農業って、
     川底や河岸に、すぐに土砂が溜まりますので、
     100年ぐらいで、
     簡単に、川の流れが変わってしまいます。
 
     何千年も、同じ所に、町が栄えるには、
     人為的に、川の流れを、制御しなければなりません。
     大河ですので、すごく大規模な治水工事になります。
     機械のない時代の、昔の人には、無理でした。
 
     ペルシャ人って、メソポタミアやバビロニアの平原に、
     井戸を掘り、ペルシャの山の水を、引いて来ました。
     井戸の底と、隣の井戸の底に、横穴を掘ります。
     人工の地下水路の水を、井戸から汲み上げたの。
     カレーズやカナートと言います。
     
     こうして、ペルシャ人は、エジプトまで征服しました。
     小アジアの沿岸は、地中海側にも、黒海側にも、
     ギリシャ人の港町が、たくさんありました。
     小アジアを征服した後、ヨーロッパに侵入しました。
     白人同士の戦争です。
 
     ペルシャが、ギリシャを攻めた戦争を、
     ペルシャ戦争と言います。
     マケドニアは、ペルシャの支配下でしたので、
     ペルシャ側に加わりました。
   
     でも、ペルシャが撤退したので、
     自分たちはギリシャ人であると、言い出しました。
          
     ペルシャ戦争のあと、
     ギリシャは内戦の時代になりましたが、
     いつも、大国ペルシャの重圧がありましたので、
     いかに対処するかが、内戦の原因でした。
     当然、ペルシャと結託する政治勢力も出て来ました。
 
     ギリシャ語を話す人たちの中でも、
     北のほうの、田舎の国が、マケドニアです。
     都市国家でなく、ペルシャ風の領土を持つ王国でした。
     ペルシャの属国になっていたマケドニアが、
     ギリシャ全土を統一して、
     ペルシャを攻めようとしました。
 
     アレクサンダーという人が、数万人の軍隊を連れて、
     小アジアを進みました。
     地中海側にも、黒海側にも、
     ギリシャ人の作った港町が、たくさんありましたのに、
     ペルシャに服属させられていました。
     これを解放するために、ペルシャに攻め上ったのです。
 
     でも、ペルシャって、
     パキスタンからエジプトまで、全部ペルシャですから、
     たった数万の軍隊が、一つや二つの戦闘に勝っても、
     ペルシャの本隊を、追い詰められるはずがありません。
 
     敵の船団は、フェニキアから南にいますが、
     息の根を止めるには、
     広い陸地を統治しなければなりません。
 
     ペルシャの統治システムを継承するために、
     白人同士の混血を奨励しました。
     
     ところが、ダレイオス3世っていう王様は、
     臣下のベッソスという人に殺されて、
     そいつが、王権の継承を宣言したの。
 
     中央アジアのバクトリアの領主ですから、
     故郷(ふるさと)へ逃げ帰ってしまいましたが、
     正義のために、アレクサンダーは、
     そいつをやっつけないといけません。
 
     アフガニスタンの北の端っこで、
     アラル海に流れ込むアムダリア川の流域です。
     ペルシャ系の言葉を喋(しゃべ)る白人の土地でした。
 
     後に、孔雀王問経という仏教の経典の中で、
     メナンドロスっていうギリシャ人の王様が、
     仏教のお坊さんに、
     自分という意識の正体は、何なのかと、尋ねました。
     お坊さんは、
     一瞬一瞬、炎の形が違うのに、
     ずーっと、一つの炎と言われるのと、同じですと、
     答えました。
 
     この時の王様が、
     紀元前1世紀のバクトリアの王様ですから、
     たぶん、アレクサンダーの軍隊の子孫です。
     孔雀王問経って、ミリンダ王の問い、として、
     日本語に翻訳されています。
     もとは、パーリ語やサンスクリットと、思います。
      
     アレクサンダーは、ペルシャを征服するために、
     バクトリアとソグディアナに、攻め込みました。
     
     ソグディアナって、
     やっぱりアラル海に流れ込むシルダリア川の流域です。
     
     めでたく、ペルシャの王権を手に入れたので、
     ベッソスを差し出したバクトリアの貴族の娘さんと、
     結婚しました。
     ベッソスは、曝(さら)し首だったと、思います。
     
     その後、カイバー峠を越えて、パキスタンに入りました。
     カイバー峠って、
     アフガニスタンとパキスタンの間の峠です。
 
     パキスタンって、インダス川流域ですから、
     古代ですと、インドです。
     インドの賢者の言うには、
     王様は絨毯の真ん中に、どっしりと座っていないと、
     端っこが、捲(まく)れ上がります。
     アレクサンダーの軍隊は、そこらじゅうを、
     躍起になって、追いかけ回しているので、
     うまく治(おさ)まらないそうです。
 
     そう言われても、わずか数万の軍隊で、
     インドから、エジプトまでを、統治するって、
     土台、無理です。
     ならず者の集団が、駆け抜けただけかも知れません。
 
     日本人が、中国に攻め込んだ時も、そう言われました。
     点と線を、押さえているにすぎないってね。
     なんとなく、性転換の運動に、似ています。
 
     アレクサンダーは、
     ダレイオス王の娘さんとも、結婚しています。
     生めよ殖やせよ、これしかありません。
 
     でも、白人とは、結婚したくせに、
     エジプトみたいに、人種が違っていると、
     混血をしないで、
     プトレマイオス朝のクレオパトラみたいに、
     最後まで、ギリシャ人の純血を守りました。
 
     白人って、体が大きいでしょう?
     黒人でも、ケニアや、ウガンダや、
     タンザニアや、南スーダンなどの、
     草原や湿原の民族は、背の高さが自慢です。
     密林の中の、背の低い民族を、馬鹿にしています。
 
     戦争をして、世界を制覇しようと思うのは、
     体の形や大きさと、密接な関係があります。
     チャップリンは、独裁者っていう映画の中で、
     身長ばっかり、気にしているヒトラーを、皮肉りました。
     
エウリピデスの、ヒッポリュトスという戯曲では、
英雄テーセウスの息子の、ヒッポリュトスは、
女性の色気に、目もくれません。
ホモでないかしら。
 
処女の守り神のアルテミスに、目を掛けて貰(もら)っています。
アルテミスって、恋愛は嫌いなのに、出産の神様ですから、
処女懐胎みたいになってしまいます。
レズでないのかしら。
 
美と恋愛の女神の、アフロディーテが、
ヒッポリュトスを、憎らしく思い、
英雄テーセウスの後妻のパイドラに、
ヒッポリュトスを愛するように、仕向けます。
 
パイドラは、
義理の息子を恋する気持ちを、自分の乳母に打ち明けます。
乳母が、ヒッポリュトスに取り継ぎますと、
ヒッポリュトスは、継母のパイドラを非難しました。
 
パイドラは混乱して、自殺しますが、
夫のテーセウスに宛てて、遺書を残しました。
ヒッポリュトスに愛されたと。
 
テーセウスは遺書を読み、ヒッポリュトスを激しく罵りましたので、
ヒッポリュトスは、アテナイを去りました。
テーセウスの怒りは収まらず、海の神様のポセイドンに、
絶対に復讐すると、誓いました。
 
ポセイドンは大波を起こして、
馬車に乗るヒッポリュトスに襲いかかりました。
馬車が転覆して、彼は瀕死の重症を負い、
テーセウスの前に、運ばれました。
 
テーセウスが、自業自得だと眺めていると、
女神アルテミスが現れて、
継母のパイドラの遺書の内容は、嘘であると、たね明かしをします。
テーセウスは、なんの罪もない実の息子を、殺したことになります。
 
女神アルテミスは、女神アフロディーテのお気に入りの人間を、
やっつけてやろうと、誓います。
 
作者のエウリピデスの言うには、
神々の世界では、他の神のすることに、干渉しません。
もっぱら、人間を操(あやつ)ることによってのみ、
神々はお互いに争います。
 
なんとも、変(へん)てこな筋書きですので、
後に、ラシーヌという17世紀のフランスの劇作家が、
フェードルという戯曲を書きました。
パイドラのことです。
 
ラシーヌの戯曲を原作にして、
18世紀のラモーという人が、イポリートとアリシーというオペラを、
作曲しました。
イポリートって、ヒッポリュトスのことですが、
アリシーは、イポリートの父親に滅ぼされた一族の娘です。
この曲は、2010-06-05 のブログに貼り付けました。
 
三島由起夫って人が、ラシーヌのフェードルを翻案して、
芙蓉露大内実記という歌舞伎の台本を書いています。
 
ラシーヌのフェードルという戯曲では、
イポリートとアリシーは、お互いに秘かに相手を慕っていますが、
お二人とも、そのことを知りません。
継母のフェードルも、継子のイポリートを慕っています。
 
行方不明になった王様のテゼー(テーセウス)の後継ぎとして、
フェードルは、イポリートをおします
そして、息子に愛を打ち明けましたが、イポリートは戸惑います。
 
息子に嫌われたと思い、自殺をしようとするフェードルに、
彼女の乳母が入れ知恵をします。
長らく行方不明になっていたテゼーが帰還しましたので、
イポリートに愛を告白されて、自分は戸惑っていると、
王様に言いなさい。
 
フェードルと乳母の言葉を信じたテゼーは、
息子のイポリートを追放して、呪いました。
フェードルは、イポリートがアリシーを愛していることを知り、
毒を飲んで死にます。
イポリートは津波に呑まれて死にました。
アリシーから事情を聞いたテゼーは、彼女を養女にしました。
 
ラシーヌの戯曲って、機械仕掛けの神を避けようとしましたが、
正気を失った人間の心って、すごく面倒臭い筋書きになり、
かえって不自然のような気がします。
精神の病気でも、神頼みの人のほうが、予後が良かったり…
精神科医って、宗教を機械仕掛けにしたようなものかも知れません。 
 
 

精神医療の廃止とコンピュータ

進化論や精神医学などの、 ロマン主義による社会や心の学説を否定して、 精神医療と精神科と精神病院の廃止を、 主張します。

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