脳の輪切り写真です。
函館の実家のようなもので、生まれた家かも知れません。
現在も脳の中で暮らしているのは、お仕事柄です。
たくさんの精神障害の人との、お付き合いが絶えません。
性同一性障害(GID・Gender Identity Disorder)の人もいます。
日本では、最近になって新しく診断名を定義された病気ですので、
一般の人には、病態がよく知られていません。
拒食症も、昔カーペンターズの妹さんが亡くなった頃は、
ダイエットが原因であるかのように言われていました。
確かにダイエットも、きっかけや口実になりますが、
健常な人の多くは、いくらダイエットの仕方を過っても、拒食症になりません。
拒食症は統合失調症の症状の一つとしてよく現れますが、
今も昔も、脳の自我機能が変調をきたすと、
睡眠や食事や排泄や性欲などに、必ず精神症状が現れます。
性同一性障害は、性欲に現れた症状の一つに過ぎません。
性欲や性別は生殖のためにありますが、
動物では、性的快感が生殖を誘う仕組みになっています。
性同一性障害では、性的快感に持続的に浸ろうとしますが、
多くは生殖不能と生殖拒否の症状が現れます。
性的快感は欲しいが、生殖はできない、という精神の病気です。
社会性は生殖に由来していますので、
性同一性障害の患者さんの多くは、
他人や社会とのコミュニケーション能力の不足が、
生殖不能や生殖拒否などの精神症状を招いています。
患者さんは、それを自覚できずに、
自分の心が異性であるかのような口実にしがみつきますが、知能は正常です。
せっかく脳の写真を入れましたので、脳の話をチョロッと始めます。
脳の周辺部の色の濃い部分を、灰白質と言い、
神経細胞の樹状突起と細胞核の集まった皮質です。
内部の白っぽい部分を、白質と言い、
神経細胞の軸索と言われる電線の集まった部分です。
樹状突起は無数に枝分かれしていて、
枝分かれの先端から、軸索の先端のほうにかけて、電気情報が流れます。
軸索の先端まで来ると、
電気情報は神経伝達物質という化学物質に変換されて、放出されます。
それを他の神経細胞の樹状突起の先端が受け止めて、
情報が神経細胞から別の神経に受け渡されます。
神経伝達物質の放出と受容の行なわれるところを、シナプスと言います。
シナプスの多い所は、神経細胞の樹状突起や細胞核が多く集まっていて、灰白質に見えます。
灰白質は、脳の表面の連続した皮質と、中心部の核と言われる独立した形態の領域に多く、
核の多くは、視床と脳室の周囲に集まっています。
視床は、thalamus(サラマス)と英語で言い、視床下部と合わせて、間脳と言います。
間脳は、脊髄から続く棒状の中枢神経が、頭蓋骨の中に突っ込んだ最先端の部分です。
植物では、花托のことをサラマスと言い、棒状の花柄の先端が膨らみ、
花びらや、おしべや、めしべや、子房などの付く基盤になっています。
人間の脳でも、視床を基盤にして、その上に大脳半球がくっついています。
視床の周囲に、大脳基底核や大脳辺縁系と呼ばれる脳の領域が集まっています。
この輪切り写真は、脳の中ほどを左右に切断した断面です。
視床の周囲の脳の領域は、いずれも脳室に接した領域とも言えます。
視床が脳室のほとりの最大の領域ですが、他に大脳基底核が脳室を取り囲んでいます。
脳室は左右一対の側脳室と、その下の第三脳室と、さらにその下の第四脳室があり、
クモ膜下腔や脊柱管に通じる脳脊髄液の詰まった一種の容器です。
側脳室と第三脳室が写っていますが、
ここに脈絡叢と言われる毛細血管の塊りのような組織があり、脳脊髄液を生産しています。
皮質は大脳の表面に連続していても、情報は皮質と中心部の核の間を往復するだけです。
皮質を縫って、大脳の表面を横に流れる情報経路はありません。
中心部の核と核の間には、情報の連絡網があります。
中心部には大脳辺縁系と言われる進化の上での古い大脳の領域があります。
海馬はHippocampus(ヒポキャンパス)と英語で言い、
大脳辺縁系の領域の一つですが、
ギリシャ神話のポセイドンの馬車を引く半馬半魚の動物の尾鰭に似た形とも、
タツノオトシゴに似た形とも言われます。
一時記憶に関係の深いことがわかっていますが、
よく見ると、ひと繋がりの大脳皮質の、
根元のほうの奥まった一部であることがわかります。
大脳皮質は、脳幹に近い根元のほうから、
頭の先端のほうへ付け加えられて進化しました。
海馬のような古い皮質を含めて、大脳辺縁系を嗅脳と言い、
それ以外の新しい大脳皮質を、新皮質と言うことがあります。
フェロモンを分泌して嗅ぎ分けることが、
哺乳類の感情や生殖の機能を発達させたことによります。
大脳新皮質に条件回路を作り、記憶容量の増加したことにより、
感情と随意筋の動きを、合理的に制御できるようになりましたが、まだ未完成です。
大脳基底核がその機能の中心になっています。
統合失調症や性同一性障害などの、
脳の器質に原因となる病変が見つからないにもかかわらず、
様々な精神症状が慢性的に複合的に現れる精神障害では、
大脳基底核と、大脳辺縁系と、視床の機能に、病気の疑いが持たれています。
大脳新皮質の機能は、正常であるように見える人もいれば、
異常に見える人もいます。
知的障害の人を見ると、知能の低いだけ、異常と言えるかも知れませんが、
統合失調症や性同一性障害などでは、知能に異常のないままの人もいれば、
軽い発達障害から引き続いて、軽度の異常があると思われる人もいますし、
やがて、明らかに知能の低下の見られる人もいます。
大脳新皮質は連合野と言われる領域で、
プロイラーが統合失調症として纏めた連合障害は、
この領域の機能障害と言われていますが、
むしろ使わないせいで衰退しただけの、二次的な障害でないかとも疑われます。
根本的な機能障害は、基底核や辺縁系や視床などにあるのではないかと。
統合失調症の患者さんの一人は、乳児期に歯がまだ生えていないにもかかわらず、
母親の乳首を噛んで血だらけにするような、お乳の飲み方しか出来ませんでした。
歯茎に力を入れずに吸うことができませんでした。
幼児期に、排便排尿の躾にてこずり、母親はお尻の締まりが悪いと言っていました。
小学校では、心理的に動揺すると、しばしば気絶しました。
登校時間になると40度の熱を出し、学校を休んでもいいと母親が言うと、
あっと言うまに熱が下がり、戸外を走り回って遊びました。
発達障害と言えるほどの能力の不足がなく、
いずれの機能も、社会生活に必要な最低限を習得していました。
思春期には、予習も復讐も試験勉強もせずに、ノートもとらずに遊んでいるだけでも、
250人ほどの同学年の中学校の生徒の中で、数番以内の優秀な成績でした。
お小遣いを貯めて、10段変速のサイクリング自転車を買っていましたが、
中学2年生の頃に、いつのまにか自転車に乗れなくなってしまいました。
手先が不器用になり、手順を追った思考や、計画的な行動ができなくなりました。
大学受験に失敗して就職した後、統合失調症の急性症状が現れ、
入院しましたが、見掛けは比較的簡単に回復して、
退院後に、幾つかの会社に就職することができました。
年齢と共に、徐々に就職が難しくなり、何度も入院しました。
入浴や歯磨きができなくなり、退院から次の入院まで、入浴しません。
50才には、排便排尿を制御できずに、紙オムツがなければ、生活できなくなりました。
現実に体験する出来事のすべてが、
心の中だけの独自の世界の出来事のように確信するようになり、
妄想は入院してもとれなくなり、自制できなくなり、
いつも妄想を口に出して実行するようになりました。
いつも、誰かと喋っているように、一人ごとを話しています。
根拠のない迷信を信じるかのように、
車のクラクションが聞こえると、出て来いという合図だ、などと言い、
真夜中にマンションの駐車場に何時間も立っています。
この患者さんの脳の、どの領域に異常があるのか、一概に言えませんが、
哺乳や腸の蠕動などの、生まれつきの能力の低さが、
統合失調症の発症に関係しているようです。
知能が高く、認知障害の現れるのは、むしろ一番最後です。
自我障害のように、人間特有の高等な連合野の機能に、
統合失調症の原因があるとは、必ずしも言えません。
性同一性障害の25%の人には、この患者さんの症状を希釈したような症状が現れます。
8%ほどの人は、65才までに統合失調症と診断され、
現在のところ性同一性障害の25%の人が、65才時点で認知障害と診断されます。
ただし統計上、認知障害の中に入れずに、性同一性障害として扱います。
一般的に、統合失調症や発達障害の人の、認知障害の年齢相応の程度と、
性同一性障害のそれとは、同じ程度と考えて差し支えありません。
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